BET Awards 2016とファット・ジョー

ブラック・エンターテイメント・アウォード2016の授賞式が行われた。これはてっきり音楽の祭典だとおもっていたのだけど、たとえば、スポーツで活躍した女性とか男性とか、若手女優賞とか、そういうのもあって、文字通り黒人のエンターテイメントに寄与…

ぶれないルーペ

前回の続きである。 この間のBlack Lives Matterとそれに関わったり関わらなかったりすることの疑惑とか違和感とかモヤモヤとかいう話だった。 Black Lives Matterというひとつの運動は、どちらかというと、ナショナルな問題へと発展した警察の蛮行によって…

とりあえず事実だけ

Kalief Browderの事件とチャールストンでのテロリズムを経てこの間、実にさまざまなことがあって、いろいろ複雑なので、いろんな疑惑や違和感をはっきりさせるために、ちょっと整理のためのメモをしたい(ぜんぶ曖昧)のだが、まずは次の引用を書き留めてお…

2015年の「新入生」たち

毎年、XXLというヒップホップの雑誌がXXL Freshmanというイベントをやっていて、2008年から始まっているらしいのだが、ちょうどこのくらいの時期(6月とか)その年注目の今後期待の大きいヒップホップアーティストを10人選んで、フリースタイルラップをさ…

Kalief Browderを忘れない

気の滅入るニュースばかりである。 もちろんサウスカロライナ州チャールストンでの妄想サイコパス人種主義テロリスト野郎によるテロリズムは、その事件自体の残酷さのみならず、この事件のすぐ後メディアが間髪入れずにこの事件を「ヘイトクライム」と呼んだ…

音楽で救われる

www.youtube.com 2013年にアムステルダムでおこなわれたケンドリック・ラマーのライブを見て、自分のケンドリック好き度もまだまだであるとおもわされたのであるが、37分間飛び続けることは体力的に無理だとしても、37分間一緒に歌い続けることはできるかも…

ストリートを歌うことについて

コンプレックス・ニュースはケンドリック・ラマーについて気の利いた特集をときどきやるのであるが、今回よかったなとおもったのは、ラマーの曲のベスト10だった。 www.youtube.com 10. Hiiipower 9. u 8. Alright 7. A.D.H.D. 6 Backstreet Freestyle 5.T…

イモ虫(Caterpillar)から蝶(Butterfly)へ

エリック・カールのはらぺこあおむしの話ではない。ケンドリック・ラマーだ。 To Pimp A Butterflyが出た後のレビューラッシュのなか、とりあえず、アルバムを聴いた後で見ようと放っておいたのがとっておきの映像があるのだが、それは、Rob MarkmanによるMT…

「レペゼン」の美学

最近NASのIllmaticを聴きなおしていて、「レペゼン、レペゼン!」("Represent")がやけに耳に残り、そういえば、とおもったのだ。とくに専門的な学術的知識に裏付けられるまでもなく、場所=hoodというのは、ラップにおいて重要なテーマであり、要素である…

よく言った、そしてよくやったチャンセラー

意外である。正直、意外だったのである。チャンス・ザ・ラッパーこと、チャンセラー・ベネットが、こんなところで有言実行の男だったとは。 引き続き、バルティモアに関することなのであるが、ビルボード誌のインタビューでバルティモアでのことに関して意見…

ラッパーの役割

90年代初頭にロドニー・キング事件があって、その後、アイス・キューブがDeath Certificateというアルバムを出し、ロス暴動が起こったのであった。あのとき、アイス・キューブ以外のラッパーがなにを言ったかということに関しては、まったくフォローしていな…

変わったことと変わらないこと

アメリカでは、黒人を動産として扱うことで自由を奪った奴隷制度が終わった後、ゲットーという空間が政治的に構築されて、黒人はそこで貧困と暴力に身動きできなくさせられ、つぎに、刑務所を中心とする矯正システムが黒人やラティーノを主とした有色人種を…

"Never Catch Me" に見た最強のコンビ

Kendrick Lamar Just Released a Bold New Rap in This Interview With Flying Lotus - Mic このふたりのことである。 ケンドリック・ラマーとフライング・ロータスといえば、ケンドリック・ラマーのgood kid, m.A.A.d. cityのショート・フィルムm.A.A.dで音…

半世紀経ったものの

公民権運動のさまざまな暴力に彩られた場面と怒れる若者だったパンサー党創設者のボビー・シールとヒューイ・ニュートンのパンサー党結成前の姿を映し出した後に、信号の壊れた交差点で子どもが車にはねられるシーンで始まるマリオ・ヴァン・ピーブルズ監督に…

アイズリーでなくジャネット

アイズリー・ブラザーズは偉大であると言っておきながら、ジャネット・ジャクソンである。ジャネット・ジャクソンについてはどこかで必ずメモっておかなければとずっとおもっていて、というのは、R&Bというと美しいメロディーにのせて愛を歌う、ぐらいの知…

世紀の大騒ぎ

はっきりいってケンドリック・ラマーが好きである、というか愛しているといっても過言ではない。そのケンドリック・ラマーの新しいアルバムが一週間早まった発売から2週間も送れて我が家に届いたのであるが、その間、それはもういろんなところで、新しいアル…

オバマとラッパーの容易ならざる関係

オバマが大統領に当選した時、なにかで目にして、その時以来頭を離れない言葉があるのだが、それは、アイス・キューブがオバマ当選に際して感想を聞かれたときの答えで、たしか、俺のおふくろが今後どうなるかを見なけりゃなんともいえないね、というような…

「ヒップ・ホップは暴力を引き起こす」のか?

「ヒップホップは暴力を引き起こす」のだろうか?たぶんこの問いは、古いものである。でも、この問いに真摯に取り組んだひとはあまりいない。というのも、ヒップホップが嫌いな人間にとって、警察を殺すことやギャングの抗争などの歌詞によって、そして実際…

非凡な若きラッパーの凡庸(そう)なショート・フィルム

ケンドリック・ラマーの新しいアルバムのレビューがPitchforkというウェブで9.3/10点という高得点を得ていて、good kid, m.A.A.d.cityの9.5点にはほんの少し及ばないものの(この点数を参考にしているわけでも信用しているわけでもないけど)、勝るとも劣ら…

新しいアルバムについて語ったケンドリック・ラマー

ケンドリック・ラマーを愛するひとすべてが待ちに待った新しいアルバムが3月23日に発売になるというので、アルバム発売が発表されて以来ファンは大騒ぎであるが、New York Timesが3月16日、17日にインタビューなどを載せていた。 Kendrick Lamar's “To Pimp …

Tricia RoseのThe Hip Hop Warsを読む

2008年に出版されたときに手に入れていたTricia RoseのThe Hip Hop Wars: What We Talk About Hip Hop-and Why It Mattersをいまさら読んでいる。トリシア・ローズといえば、ハーバードのアフリカン・アメリカン研究所につくられたHip Hop Archiveでも基本図…

かあちゃんというテーマ

ラップは女性嫌悪(misogyny)に、そして女性嫌悪の言葉に溢れている。いつ頃から顕著なのかよくわからないのだが、たぶんDr.DreとかSnooop Dogとかあたりから2000年代に入るころがピークだろうか、たとえば50centとかネリーとかの時代だと、札束とか、車…

ケンドリック・ラマーのショート・フィルムm.A.A.d.

ケンドリック・ラマーのドキュメンタリー短編フィルムが、2014年夏に行われたサンダンスNEXT FEST(これは、サンダンス映画祭の発案者ロバート・レッドフォードが、普段観られないアーティストの映画を観れるようにと、しかも音楽と映画をつなぐという目的で…

いまさら『ミシシッピ・バーニング』を観る

2月はブラック・ヒストリー・マンス、というのとはたぶんまったく無関係に、近くの人権センターにて、無料で『ミシシッピ・バーニング』を見せてくれるというので行ってきた。観客はお年寄りばかり7名ぐらい。やっぱりね。 1964年にミシシッピ州で、3人の公…

ヒップホップと映画ふたたび・・・の前置き

しつこいが、2月はブラック・ヒストリー・マンス。1965年2月21日にマルコムXが暗殺されたので、今週は特に、マルコムX関係の記事がどこも多い。「ブラック・ヒストリー・マンス:必読書」(ガーディアン)でも、一番にマルコムXの自伝があげられている。 …

ケンドリック・ラマーと人種問題

Music.Micで、ケンドリック・ラマーの人種問題に関する発言や曲の内容がものすごい論争となっていることが紹介されているのでまとめてメモっておきたい。 Kendrick Lamar Just Celebrated His Grammy Wins by Releasing This Brilliant Single Kendrick Lama…

2月はアフリカ系アメリカ人の歴史を讃える月

2月のアメリカと言えば、Black History Monthである。これまで無視されてきたアフリカ系アメリカ人のアメリカにおける貢献や功績、歴史を讃える月。各地でいろんなイベントが催される。2月にたまたまNYに行ったとき、ニューヨーク州立大学でマーティン・ル…

また理由はビヨンセ

いったいカニエはビヨンセのなんなのか。 ガーディアンによれば、カニエがビヨンセを激しく崇拝しているのは周知のことだし、それは兄弟愛の一種である、ということだ。 何の話か。 カニエがまたグラミー賞の受賞スピーチに乱入した。2009年のときはテイラー…

息ができない

なにか楽しい話題はないかと(なぜか)GuardianやNew York Timesをうろうろしていて、je suis Charlieより前によく目にした言葉は、I can't breatheだった。2014年、立て続けに、警官による黒人の射殺事件が起こった。ニューヨークの事件は、その後の展開も…

2015年期待のラップアルバム

guardianのcultureのページをチェックしたら、 2015年もっとも期待されるアルバム5枚が紹介されている。 http://www.theguardian.com/music/musicblog/2015/jan/21/2015-rap-albums-kanye-west-kendrick-lamar カニエ・ウエスト(1977年、ジョージア州アトラ…