2015年の「新入生」たち

  毎年、XXLというヒップホップの雑誌がXXL Freshmanというイベントをやっていて、2008年から始まっているらしいのだが、ちょうどこのくらいの時期(6月とか)その年注目の今後期待の大きいヒップホップアーティストを10人選んで、フリースタイルラップをさせたり、ライブをやらせたり、夏号のXXL雑誌の表紙にしたり、ラウンドテーブル・ディスカッションまでやらせたりして、注目新人のお披露目とか応援とか、雑誌の売り上げとか、ヒップホップを盛り上げるとか、まあいろんな意味があるみたい。たとえば2010年にはJ.Cole、2011年にはケンドリック・ラマー、2014年にはチャンス・ザ・ラッパーがフレッシュマンのなかに選ばれていて、いまでもガンガンがんばっている。もちろん、拒否したひともいるようで、過去にこれに選ばれるのを拒否したのは7人、ジェイ・エレクトロニカ、ドレイク、ニッキ・ミナージュ、VADO、エイザップ・ロッキー、アール・スウェットシャツ、ヤング・サグだそうです。

www.xxlmag.com

 

それで今年の10人は、この方たち。

 

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Source: XXL Freshmen

Fetty Wap, Dej Loaf, Vince Staples, Raury, Goldlink, Tink, Shy Glizzy, K camp, OG Maco, Kidd Kiddの10人。

theboombox.com

 

  この3年ほど、ファンにも選択する権利が与えられたらしく、10番目、つまり最後の一人を選ぶときにはファンも投票できるらしいのだが、そういうのも含めて、この10人を選ぶのに毎年8か月かかるそうである。音楽を聴くことから始まり、会ったり、面談したり(!)、選んだり、削除したり、選び直したり・・・選ぶ方もたいへんな作業である。

 しかし、8年で80人、その80人のなかには、きっといまひとつぱっとしなかったひともいるだろうし、その80人の下には、もっともっと多くの屍が転がっているのだと思うと、どこも厳しい世界だなあと、一般論のうえにただの感想。

 2014年のチャンス・ザ・ラッパーのFreshmen Cypherはよかった。Cypherというのは、アーバン・ディクショナリー(ネットで見れるスラング辞書)によれば、なにかを順々にやることで、たとえばフリースタイルでラップする場合、代わる代わるラップすることらしいが、たとえば、その2014年のチャンス・ザ・ラッパーが出ているのを見ればわかる通り、10人が3~4人のグループに分かれ、グループごとで、後ろでDJが音を鳴らしていて、その一曲に合わせて決められた時間(数分か数十秒か)だけ、一人一人が自分のスタイルでラップしていくということのようである。(Cypherって呪文という意味なんだけど、ああ、なるほど、同じ言葉をぶつぶつ繰り返すっていうところから来てるんかな?)。なにがよかったかというと、明らかに他のラッパーと違うのがわかるし(DJも周りも感心してた)、蹴落としてやろうとか奇をてらってなんかやってやろうっていう気概がないのがよかった。
 以下はThe Boomboxというブラック・ミュージックを扱うサイトがまとめた、これまでのfreshmen cypherでサイアクだったのと最高だったもののランキング。悪い順に並んでいるそうである。その導入部にはこう書かれている。

 

過去数年間、XXLのフレッシュマン・サイファーは、ヒップホップの頂点にいる人びとからラップの新参者までのかなりの注目をhave garnered集めてきた。2011年にits inception始まって以来、 サイファーはこのブランド[XXL Freshman]にとってhas become a stapleひとつの中心的要素となっている。ケンドリック・ラマー、ジョーイ・バッドアス、マックルモア、ロジックのようなラッパーたちはライオンの隠れ家[サイファーのこと]にunscathed完全に無傷な状態でhave walked into堂々と足を踏み入れたのだが、haven’t fared so wellそううまくはやれなかったものもいたのだ。

     自分のお気に入りの有名になりつつあるアーティストたちの新しいバーズ(スラング辞典によると、4ビートで繰り出せるリリックのことらしい。早口であればあるほど4ビートのあいだに繰り出せるバーズは多い。)が聞けるのをyearning to心待ちにしているファンがいてこそ、XXL はまさにこういうことができるようなprovided the platform基盤を作ったのだ。2011年にわれわれは、若きK Dot[ケンドリック・ラマーのこと]が、そのbreathtaking息をのむようなヴァースでもって期待と自信をexude溢れ出させているのを見た。2012年にはダニー・ブラウンとHospinがサイファーを自分たちの個人的な領域へとtransformed変容させた。2013年には、Joey Bada$$, Action Bronson, Ab-Soul そしてTravis $cott が、cohesive結合力があってリリック的にsolid濃いサイファーを見せてくれた。XXLに、こういった記憶すべき瞬間のorchestratingお膳立てをしたいというpenchant forの強い傾向があったことは、多くのアーティストたちにとって威信を作り上げる一助となった。このat handすぐそばにあるthe platform出発点take advantage of利用できるものもいた一方で、flounderedへまをしたものもいるのである。

 

 

theboombox.com

 

2011年のケンドリック・ラマーのグループは2位。

www.youtube.com

 

2014年のチャンス・ザ・ラッパーのグループは7位

www.youtube.com

 すごいイベントだ。

 Fetty Wapがいろんなところで話題だけれど、個人的には今年はDej LoafとTinkという女性ラッパーと、麦藁帽のRouryが大注目である。あの麦藁帽子の下のニコニコ顔をただの愛想のいいラッパーとみていいのか、不敵とみていいのか・・・