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変わったことと変わらないこと

 アメリカでは、黒人を動産として扱うことで自由を奪った奴隷制度が終わった後、ゲットーという空間が政治的に構築されて、黒人はそこで貧困と暴力に身動きできなくさせられ、つぎに、刑務所を中心とする矯正システムが黒人やラティーノを主とした有色人種をそこに閉じ込め続ける手段として発見され、いまでは貧しい有色人種はゲットーと刑務所を行き来するか、刑務所に閉じ込められたままか、ゲットーに閉じ込められたままの状態だ、というようなことを言ったのは"Punishing the Poor"などの一連の人種と貧困と刑事司法制度にかかわる論文で有名なWacquantだし、刑務所が奴隷制度に代わって黒人から自由を奪う制度としてアメリカでは大いに活用されていることや、そこでの処遇がいかに非人間的なものであるかを明らかにして、刑務所の廃止を訴えているのはアンジェラ・デイヴィスである。

 

 刑事司法システムがいかにいい加減なもので、人種偏見に満ち満ちていて、刑務所がいかに非人間的な場所かというのは、いちいちここで披露せずとも、『ショーシャンクの空に』(だっけ)など刑務所に不当に投獄された黒人が登場する物語を見たり、そこまでしなくてもアメリカのニュースを見ていればすぐに分かるというものであるのだが、こういうことに抗議して受刑者が抗議行動や暴動を起こしたこともある。そして1960年代や70年代にはそれがひとつの運動となったりもして、一番有名なのはニューヨークのアッティカ刑務所での暴動で、看守もたくさん死んだりして、これをきっかけに刑事司法をつかさどる人たちもちょっと考え直したりもしたようなのであるが、それはもちろん、いかにそういうことを未然に防ぐか、という方向に、であり、刑務所がより管理や警備を強化していったのは言うまでも無い。

 

 こういう状況であるのだから、当然、刑事司法制度が、警察だとか看守だとかの人種偏見や差別やマイノリティへの暴力という醜聞に事欠くことが無いことは、ボルティモアの事件を含めたここ最近のニュースを見れば十分である。つい昨日も、サンフランシスコの警察が、人種偏見とホモフォビア(同性愛嫌悪)に満ちたメールのやり取りをしていることが暴露され、それがマイノリティの、特に黒人の不当な逮捕や暴力に繋がっていないかどうか大規模な調査が行われることになったことが報じられたのであるが、それよりも驚愕したのは、それより以前に、刑務所内で、看守が受刑者同士に無理やり喧嘩試合をさせて賭けをしていた、その試合に応じない受刑者には嫌がらせをしていた、というニュースにである。警察のメールのやり取りの事件のあと、この件も調査の対象となることになった。アメリカで、というよりもそれは世界的な傾向というか風潮というか慣習というか、人種差別や偏見についてのニュースは日常茶飯事であるが、こういうニュースに接すると、アンジェラ・デイヴィスが言うように、奴隷制時代から一歩も前に進んでいないという気持ちになる。

(Source: Timothy Williams, "Inquiry to Examine Racial Bias in the San Francisco Police," New York Times, May 7, 215)

http://www.nytimes.com/2015/05/08/us/san-francisco-police-department-racial-bias-investigation.html?ref=us&_r=0

 

 サンフランシスコの黒人人口は5%にたいして、黒人の逮捕率や収監率は50%、未成年者の受刑者の数は全体の60%を越えるという。警察のあいだでやり取りされたメールの内容は、アフリカ系アメリカ人をリンチすることについて議論していたり、アフリカ系アメリカ人は避妊手術を受けるべき(子どもを生むな)といったことを言ったり、「ホワイト・パワー」と言ったり、黒人に蔑称で言及したり。醜悪極まりない。

 

 それで、この写真は、警察署長のGreg Suhrで、こういった内容のやり取りをした警官7人を首にした。警察の偏見に満ちた態度が不当な逮捕に繋がっていないかどうか、サンフランシスコの刑務所、そして何百というすでに収監されている受刑者が故意に誤ったDNA鑑定によって収容されていないかどうか、の3点が調査の対象になる。この手の調査を過去にも強く要請してきた市の監督委員(というのがあるのだろうか)マリア・コーヘンというひとが「公民権のために闘うことはサンフランシスコの文化と伝統の一部であることは間違いないのです、だから、これをこのまま推し進めていくことは唯一理にかなっていることなのです」というように、たしかに、このような不当な扱いへの抗議行動や運動は西海岸の文化であり遺産である。なんといってもパンサー党を生んだ土地である。

 

 ここまでは変わらないことについてメモったのであるが、変わったことというのは、やっぱりラップにかかわることである。だけどこれもまた長くなりそうなので、ページを変えたい。