"Never Catch Me" に見た最強のコンビ

 

 

Kendrick Lamar Just Released a Bold New Rap in This Interview With Flying Lotus - Mic

 このふたりのことである。

 ケンドリック・ラマーとフライング・ロータスといえば、ケンドリック・ラマーのgood kid, m.A.A.d. cityのショート・フィルムm.A.A.dで音楽を担当したのがフライング・ロータスだったのだし、新しいアルバムの"Wesley's Theory"をプロデュースしたのはフライング・ロータスであるし、ここでMusic.Micの記事が取り上げている話題は、ラジオ番組で、フライング・ロータスがケンドリック・ラマーに対しておこなったTo Pimp A Butterflyのもつ影響力についてのインタビューのなかで、未発表のままになっている(「政治的理由のため」らしい)ふたりのコラボレーションした曲があることをフライング・ロータスが明らかにしたということであり、その曲自体もこの記事のなかで聞くことはできるのであるが、使うかどうかはともかく、いつもオレのビートをケンドリックは持って行っちまう!とフライング・ロータスが言うように、ラマーのラップとフライング・ロータスのビートは素人が聞いても馬が合いすぎている、といった表現以上のもののようにおもえてならないことがわかるのが、ふたりが共演した(?というのだろうか)"Never Catch Me"だ。

 

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 この映像のすばらしいこと!子どもの踊りのうまいこと!一見重々しいテーマを扱っているようで、フライング・ロータスの曲の軽快で自由なこと。この曲は、フライング・ロータスの最近のアルバムYou're Deadに集録されているらしい。

 

 死者が蘇るというテーマは、ひょっとするとフライング・ロータスのテーマなのだろうか。というのは、m.A.A.d.で監督を務めたKahlil Josephがフライング・ロータスの音楽のために作ったショート・フィルム(ミュージック・ビデオ並に短い)"Until the Quiet Comes"でも、警察のヘリコプターが上空を(おそらく警備のために)飛び回る黒人ゲットーで銃の撃ち合いか何かで殺されてしまった黒人男性は、蘇り、しなやかに踊りながら、車で立ち去っていってしまう、それをフライング・ロータスはずっと目撃している、というものなのだが(しかし、殺された男性の殺された子どもは蘇らない、もしくはあの子は実際には殺されていないのかもしれない)、黒人の生、というよりも生活に密着している死を、あんなに軽やかに(決して蔑ろにして軽く、ではない)扱ってみせるフライング・ロータスがすごいのか、映像作家がすごいのか。

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 ちなみに、"Never Catch Me"の監督は、Kahil Josephではなく、東京出身で、アール・スウェットシャツのビデオ製作でも有名らしいHiro Murai。

HP→Hiro Murai

 Faderという雑誌のWeb版なのかWeb雑誌なのか、とにかくそこに、"Never Catch Me"についてのHiro Muraiへの興味深いインタビューがあった。

あなたが"Never Catch Me"のコンセプトをcome up with 思いついたのですか、それとも、フライング・ロータスのアイデアですか? 彼はアイデアを探していたんだけど、having some trouble苦労しているようだった。彼の(original)もともとのイデアは、自分の(funeral)葬式に遅れてくる少年についてのものだったから、トム・ソーヤーで起こるようなことみたいなものだったんだ。僕は(as a seed)元ネタとしてはそれをすごく気に入っていたよ、だってアルバム全体は死についてのものだったからね、でも、その曲は、それ(死)を子どもらしく馬鹿にしたようなものだったんだ。僕はそのアイデアを採用し、それをふたりの子どものダンスという要素に変えたんだよ。

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 この人がHiro Muraiさんでしょうか。

 このインタビューはほんとうに興味深く、たとえば、ラマーのBitch, don't kill my vibeを意識していたか?(あの映像も葬式だった)とあって、Muraiは、正直ぜんぜん意識していなくて、むしろフライング・ロータスのUntil The Quiet Comesを意識していたと答えている。なるほどー!この映像を楽しみたいなら、このインタビューも必見なのである。